経営改善ガイド

訪問介護事業所の業界ベンチマーク比較表|経営指標の業界平均データ【2026年版】

開業6ヶ月を過ぎ、訪問介護事業所の本格的な経営改善期に差し掛かった皆様へ。本ガイドは、貴事業所が「どう伸ばすか」「どう改善するか」に焦点を当て、業界の主要ベンチマークと比較することで、具体的な経営課題の発見と解決策のヒントを提供します。特に人材確保と訪問スケジュールの効率化が喫緊の課題である訪問介護事業所において、これらの指標を理解し、自社の立ち位置を把握することは、持続的な成長のために不可欠です。本表を活用し、事業所の強みと弱みを明確にし、次なる成長戦略を策定しましょう。

業界概況

訪問介護事業は、高齢化社会におけるニーズの高まりから、今後も安定した需要が見込まれる一方で、介護職員(ヘルパー)の人材不足が最大の経営課題です。特に資格取得者や経験豊富な人材の確保は困難を極め、この課題がサービスの提供体制や収益性に直結します。また、3年ごとの介護報酬改定は事業収益に大きな影響を与えるため、常に制度改正の動向を注視し、柔軟に対応する体制が求められます。地域密着型サービスとして、居宅介護支援事業所との連携強化も事業の成長を左右する重要な要素です。

ヘルパー稼働率

効率系

ヘルパーがサービス提供に実際に従事した時間(移動時間除く)を、契約上の労働時間で割った割合。訪問介護の収益性を測る上で最も重要な指標です。

下位 65
中央値 75
上位 85
%

70%を下回る場合は、スケジュール最適化や複数利用者への同時並行的なサービス提供可能性、訪問エリアの見直しを検討しましょう。80%以上を目指し、特に「カイポケ」などの介護ソフトのスケジュール機能を活用し、空き時間を埋める努力が必要です。

サービス提供時間/月/ヘルパー

効率系

ヘルパー1人あたりが月に実際にサービスを提供した総時間。労働時間の質と収益貢献度を示す指標です。

下位 120
中央値 150
上位 180
時間

150時間以上を目標にしましょう。この時間が短い場合、移動時間ロス、スケジュールの空き、依頼件数の不足が考えられます。「ワイズ」の配車システムで最適なルート選定や、居宅介護支援事業所への営業強化で新規利用者獲得を図りましょう。

人件費率

コスト系

売上高に占める人件費(ヘルパー給与、サ責給与、法定福利費等)の割合。訪問介護では70〜80%が一般的です。

下位 70
中央値 78
上位 85
%

80%を超える場合は、サービス単価に見合った効率的な人員配置ができていない可能性が高いです。ヘルパーの生産性向上や、特定事業所加算取得による加算収入の確保を検討しましょう。

営業利益率

売上系

売上高から売上原価と販売費及び一般管理費を差し引いた営業利益の割合。事業の総合的な収益力を示す指標です。

下位 2
中央値 5
上位 8
%

5%未満の場合、コスト構造の見直しが急務です。特に人件費の適正化、車両費や通信費の効率化、介護ソフトの機能を最大限活用した事務作業の軽減を通じて、利益率の改善を図りましょう。

特定事業所加算取得率

効率系

算定要件を満たし、特定事業所加算を請求している利用者の割合。高い加算を適用することで収益性が大きく向上します。

下位 0
中央値 50
上位 100
%

100%を目指すべき最重要指標の一つです。介護福祉士や実務者研修修了者の配置、24時間対応体制、重度者対応体制など、加算要件を再度確認し、達成に向けた具体的な計画を策定し実行しましょう。

利用者満足度(NPSスコア)

顧客系

Net Promoter Score (NPS) は、顧客がサービスを他者に推奨する可能性を測る指標。事業所のサービス品質とブランド力を示します。

下位 0
中央値 15
上位 25
スコア

NPS +20以上を目標に設定しましょう。定期的なアンケート実施とフィードバックの収集・改善が不可欠です。特にヘルパーの質の向上、丁寧な傾聴、迅速な対応がNPS向上に寄与します。

居宅介護支援事業所からの依頼件数/月

顧客系

ケアマネジャーからの新規利用者紹介件数。事業所の営業力と地域での信頼度を示す指標です。

下位 2
中央値 5
上位 8

月5件以上を目指しましょう。定期的な居宅介護支援事業所訪問、丁寧な情報提供、迅速な初回アセスメント対応、自事業所の強み(特定事業所加算対応、専門性の高いヘルパーなど)を明確に伝えることが重要です。

キャンセル率

効率系

予定された訪問介護サービスのうち、利用者都合でキャンセルされた割合。収益に直結するだけでなく、ヘルパーのモチベーションにも影響を与えます。

下位 2
中央値 4
上位 6
%

5%以下を目標にしましょう。利用者との密な連携による体調確認、事前の代替日調整、訪問スケジュールの柔軟な対応で、不要なキャンセルを減らす工夫が必要です。

ヘルパー定着率

効率系

ある期間において、事業所に在籍し続けたヘルパーの割合。人材確保が最大の課題である訪問介護事業所において、経営の安定性に直結します。

下位 60
中央値 70
上位 80
%

75%以上を目指しましょう。適切な賃金体系、キャリアアップ支援(実務者研修費用補助など)、サービス提供責任者によるきめ細やかなサポート、ICTを活用した業務負担軽減(「ケア樹」などの介護ソフトによる情報共有)が有効です。

移動時間比率

効率系

ヘルパーの総労働時間に占めるサービス間の移動時間の割合。スケジュールの効率性を示す指標です。

下位 10
中央値 15
上位 20
%

15%以下を目標にしましょう。介護ソフト(例: 「カイポケ」のルート最適化機能)を活用し、複数利用者を効率的に回るルートを組むことが重要です。特定のエリアに利用者を集める戦略も有効です。

サ責1人あたりヘルパー数

効率系

サービス提供責任者(サ責)1人あたりが管理・連携するヘルパーの人数。サ責の負担と業務品質に影響を与えます。

下位 15
中央値 20
上位 25

20人以下が望ましいとされます。サ責の業務負担が過多になると、サービスの質の低下や離職に繋がりかねません。特に新人ヘルパーが多い場合は、手厚いサポート体制が必要です。サ責の業務効率化(介護ソフト活用)も検討しましょう。

成功パターン

  • **特定事業所加算の積極的取得と維持**: 専門性の高い人材配置や24時間対応体制を構築し、高い介護報酬単価を確保することで、ヘルパーの待遇改善と収益安定化を実現しています。
  • **ICT活用による徹底した業務効率化**: カイポケ、ワイズ、ケア樹などの介護ソフトを最大限活用し、訪問スケジュールの最適化、記録業務のペーパーレス化、ヘルパーとの情報共有を効率化することで、移動時間ロスを削減し、ヘルパーの稼働率を向上させています。
  • **ヘルパー採用・定着への投資**: 介護職員初任者研修・実務者研修の費用補助、キャリアパスの明確化、サービス提供責任者によるきめ細やかな相談体制など、ヘルパーが働きやすい環境を整備し、高い定着率を維持しています。
  • **居宅介護支援事業所との強固な連携**: 定期的な訪問や情報交換を通じて信頼関係を構築し、自事業所の強み(例:身体介護の専門性、特定事業所加算対応)をアピールすることで、安定的な新規利用者紹介を確保しています。

よくある落とし穴

  • **慢性的なヘルパー不足とサービス提供機会の損失**: 採用活動が後手に回り、需要があるにも関わらずサービス提供ができない状態に陥り、収益機会を逸しています。特に、身体介護に特化したヘルパーの確保が難しいケースが多いです。
  • **非効率な訪問スケジュール管理による移動時間ロス**: ルート最適化を怠り、ヘルパーの移動時間が過剰になり、実質的なサービス提供時間が減少。ヘルパーの疲労蓄積やモチベーション低下、さらには人件費率の悪化に繋がっています。
  • **介護報酬改定への対応遅れ**: 制度改正の情報を早期にキャッチアップせず、加算要件の変更や報酬単価の見直しに適切に対応できないため、本来得られるべき収益を取り逃がしています。
  • **居宅介護支援事業所への営業不足**: ケアマネジャーとの関係構築を怠り、新規利用者の紹介が伸び悩むことで、事業規模の拡大が停滞しています。特に新規開業から時間が経過しても、継続的な関係づくりをしないケースが多いです。

データソース

厚生労働省「介護事業経営実態調査」、独立行政法人福祉医療機構「WAMNET」、業界団体の公開データ、弊社コンサルティング実績に基づく。