経営改善ガイド

訪問看護ステーションの業界ベンチマーク比較表|経営指標の業界平均データ【2026年版】

開業から6ヶ月以上が経過し、本格的な経営改善と成長を目指す訪問看護ステーションの皆様へ。自社の経営状態を客観的に把握し、次の戦略を立てるためには、業界平均との比較が不可欠です。このベンチマーク比較表を活用し、「どう伸ばすか、どう改善するか」の具体的なアクションプランを策定しましょう。特に人材確保と地域連携が鍵となる訪問看護事業において、データに基づいた経営判断が成功への道を開きます。

業界概況

高齢化の進展と地域包括ケアシステムの推進により、訪問看護ステーションの需要は引き続き拡大しています。しかし、その一方で、病院・クリニック勤務経験を持つ看護師の独立開業が増える中、訪問看護経験者の採用難は全国的な課題です。安定した経営には、開業から6ヶ月以降、いかに質の高い人材を確保し、居宅介護支援事業所との連携を深め、複雑な介護・医療保険制度を適切に運用するかが問われます。

月間延べ訪問回数(常勤換算1名あたり)

効率系

常勤換算の看護師1名あたりが1ヶ月に行う訪問の総回数。看護師の生産性を示す重要な指標です。

下位 90
中央値 120
上位 150

200回/名を下回る場合は、スケジューリングの最適化、訪問ルート効率化、記録業務のICT化による時間創出を検討しましょう。

利用者一人あたり月額単価

売上系

利用者1人あたりの月に発生する売上額。提供サービスの質や加算取得状況を反映します。

下位 45,000
中央値 55,000
上位 65,000

単価が低い場合、特定事業所加算、24時間対応体制加算、ターミナルケア加算などの取得状況を見直し、専門性を高める戦略が必要です。

看護師の訪問稼働率

効率系

看護師の労働時間のうち、実際に訪問サービスに従事している時間の割合。移動時間や記録業務時間とのバランスが重要です。

下位 40
中央値 50
上位 60
%

70%を下回る場合は、訪問スケジュールの最適化、移動手段の見直し、あるいは記録業務の効率化(例:モバイル端末活用)を検討しましょう。

人件費率(売上高に占める割合)

コスト系

売上高に対する人件費の割合。訪問看護ステーションでは最も大きなコスト要因です。

下位 60
中央値 68
上位 75
%

75%を超える場合は、生産性向上による人件費効率化や、適切な加算取得による売上向上を通じて、収益構造の改善を図る必要があります。

営業利益率

売上系

売上高から売上原価と販管費を差し引いた営業利益の割合。事業の収益性を示します。

下位 5
中央値 10
上位 15
%

10%を下回る場合は、人件費をはじめとするコスト構造の見直し、あるいは専門性を活かした加算取得による単価向上を検討してください。

居宅介護支援事業所からの月間紹介件数

顧客系

ケアマネジャーからの新規利用者紹介件数。利用者獲得の主要チャネルの健全性を示します。

下位 2
中央値 5
上位 8

月5件を下回る場合は、地域連携の強化、定期的な事業所訪問、ステーションの専門性や強みの情報提供を積極的に行う必要があります。

居宅介護支援事業所からの紹介率

顧客系

新規利用者獲得経路のうち、居宅介護支援事業所経由が占める割合。このチャネルへの依存度を示します。

下位 50
中央値 60
上位 70
%

70%を超える高い依存度はリスクを伴います。病院連携や地域住民への広報活動など、他の獲得チャネル開拓も視野に入れましょう。

介護・医療保険請求返戻率

効率系

提出した保険請求のうち、内容不備等で返戻された割合。請求業務の正確性を示す重要な指標です。

下位 0.5
中央値 1
上位 2
%

3%を超える場合は、請求業務フローの見直し、ダブルチェック体制の強化、あるいはクラウド型介護ソフト・レセコンの導入を検討してください。

訪問看護師の定着率(1年後)

効率系

採用後1年が経過した看護師が継続して勤務している割合。人材確保が最大の課題である業界で、極めて重要な指標です。

下位 75
中央値 85
上位 90
%

定着率が低い場合は、オンコール負担軽減策、給与・福利厚生の見直し、専門性の高い研修機会の提供、ICTによる業務効率化を複合的に検討しましょう。

新規利用者獲得コスト (CPA)

顧客系

一人の新規利用者獲得にかかった平均コスト。営業活動や広報活動の効率性を示します。

下位 30,000
中央値 50,000
上位 80,000

8万円を超えるCPAは営業戦略の見直しが必要です。ケアマネジャーとの信頼関係構築や、地域での口コミ・評判向上に注力しましょう。

オンコール発生頻度(利用者100名あたり月間)

効率系

利用者100名あたりに発生する月間のオンコール件数。看護師の負担度や、利用者状況の安定度を測る指標です。

下位 8
中央値 12
上位 16

頻度が高い場合は、利用者・家族への事前指導強化、緊急時対応フローの見直し、医療機関との連携強化を図り、看護師の負担軽減を目指しましょう。

医療機器管理・安全対策実施率

効率系

医療機器を使用する訪問における、定期点検・記録・安全対策が規定通り実施されている割合。安全管理体制の評価指標。

下位 90
中央値 95
上位 100
%

95%を下回る場合、医療事故リスクが高まります。定期的な研修、チェックリストの徹底、責任者の明確化が必要です。

成功パターン

  • **人材確保と定着への戦略的投資:** 訪問看護経験者採用のための求人戦略の工夫、オンコール負担軽減のための交代制・ICT活用、専門研修機会の提供、キャリアパスの明確化により高い定着率を実現しています。
  • **地域医療連携のハブとなる存在:** 居宅介護支援事業所や地域の病院、診療所との綿密な連携体制を構築。定期的な情報交換会やサービス担当者会議への積極的な参加を通じて、新規利用者獲得と質の高いサービス提供を両立しています。
  • **加算を計画的に取得する事業計画:** 特定事業所加算、24時間対応体制加算、ターミナルケア加算、精神科訪問看護基本療養費など、自社の専門性や地域ニーズに合わせた加算を計画的に取得し、高い利用者単価と収益性を確保しています。
  • **ICTによる業務効率化の推進:** 訪問記録の電子化、スケジュール管理、情報共有ツールの導入により、記録業務時間の短縮、移動の効率化、オンコール対応の負担軽減を図り、看護師が利用者ケアに集中できる環境を整備しています。
  • **専門特化による差別化:** 精神科訪問看護、小児訪問看護、看取りケアなど、特定の分野に専門特化することで、競合との差別化を図り、地域における独自のポジションを確立し、ケアマネジャーからの指名獲得に繋げています。

よくある落とし穴

  • **訪問看護師の採用・定着対策の遅れ:** 採用難が続く中で、待遇改善や働きやすい環境整備を怠ると、看護師の離職に繋がり、利用者へのサービス提供体制が不安定になります。
  • **居宅介護支援事業所との連携不足:** 新規利用者獲得の約8割がケアマネジャーからの紹介に依存するにも関わらず、事業所訪問や情報提供を怠ると、安定した利用者数確保が困難になります。
  • **介護・医療保険請求業務の不正確さ:** 複雑な請求業務に対する知識不足やチェック体制の不備は、請求返戻率の増加を招き、キャッシュフローの悪化や事務負担の増大に繋がります。
  • **オンコール体制による看護師の疲弊:** 夜間・休日の緊急対応が特定職員に集中し、過度な負担となることで、離職の原因やサービス品質の低下を招きます。
  • **BCP(事業継続計画)の未策定・形骸化:** 義務化されたBCP策定を軽視したり、実効性のない計画にとどまったりすると、災害時などに事業継続が困難となり、利用者への責任を果たせなくなるリスクがあります。

データソース

厚生労働省「医療経済実態調査」「介護サービス施設・事業所調査」、訪問看護関連業界団体レポート、民間調査機関データ等を基に推計